自他ともに認める町一番のパン職人ポルトは、自分の店の真向かいに新しいパン屋が構えられたことを初めこそ気にしていなかったものの、もっとも真価の問われる商品「食パン」それだけを毎回購入してくれていた3名の常連客が奪われたという事態に気付いてしまってからは、その理由ばかりが気になり、心中穏やかでいられなかった。
そして、年に一度のパンづくり大会を前に、プライドを抑え、その店の食パンを口にしてみたポルトは、その確かな味を知り、負けじと自らも努力を重ねたのだが、スパイとして送り込んだ一番弟子カルルが戻らないことなどによって、さらに気を揉んだ状況でおいしいパンをつくれるはずもなく、惨敗という結果で大会を終える。
その後、カルルからの手紙によって、誇大すぎた自尊心のために、努力や他者またはパンそのものへの愛情が自らに欠けていたことを思い知らされたポルトは、自信を失い、一度は店をたたむ決意をしたのだが、夫人の力強い励ましの中にパン職人としての役目を見出すと、ふたたび他者のためのパン作りをはじめた。
小倉明・文
石倉欣二・絵
薦めたい学年:3年生後半~4年生
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