読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



二番目の悪者

たいそう昔のこと、ある国の王が自身の死期が近いことを悟り、国民の間で次の王を決めるよう御触れを出した時、その国には自らを“金のたてがみをもって生まれた天に選ばれた者”と理解し飾るお金持ちのライオンと、心やさしく強いことで民衆の間から推す声多く、飾らずとも美しいたてがみをもつ銀のライオンという、二人の候補がいた。
ところが、立場が危うくなることを感じ取った金のライオンが、銀のライオンに不利となる根も葉もない悪評を言い回るようになったことで、銀のライオンへの警戒心は国中でみるみる膨れ上がり、ついに金のライオンが王位に就くと、好き勝手な政治と贅沢三昧の日々に民衆は生きる希望をなくして、国はたちまち荒れ果ててしまった。
自らの目で何か一つでも確かめることをせず噂を広めてしまった者たちは、“誰かにとって都合のよい嘘が世界を変えてしまうこともある”とそのとき学べたかもしれなかったが、変わり果てたその大地には、もう誰の姿もなかったのである。

誰の耳にも届くことのなかった真白な雲の呟きとして、つぎの言葉が物語の途中に出てきます。
「嘘は、向こうから巧妙にやってくるが、
 真実は、自ら探し求めなければ見つけられない」
連綿と続く歴史の中で、時が移って世代が繋がれても、王朝の交代があっても、体制が変わっても、文明がどれだけ発展を見せても、かたちをほぼ変えることなく我々を翻弄し支配し続けている人の世の“悪”。それをはっきりと読者に見せてくれる、ライオンの姿を借りた人間の話です。
教室では、小学校5・6年生に読み聞かせ道徳的な学びを見つけてもらうほか、中高生に社会やネットリテラシーについて考えてもらうきっかけとして与えています。

林木林・文
庄野ナホコ・絵

薦めたい学年:読み聞かせ Level 4
読み聞かせにかかる時間:10分強


0 件のコメント:

コメントを投稿

ご意見・ご感想、お待ちしております。