読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



はまゆり写真機店

長い雨の季節がようやく明けたある日の夜、海辺の町に構えられた一軒の古いカメラ屋、はまゆり写真機店を訪ねてきたおばあさんは、次の満月の夜に砂浜で写真を撮ってくれるよう店主の周一に依頼すると、さっといなくなってしまったのだが、どうやら彼の亡くなった父親・朝吉の若い頃と見間違えていたようなのだった。
そこで、真実は伝えないまま、おばあさんの望みを叶えてあげることにした周一は、父愛用のカメラなど遺品を手にとっては昔を懐かしみ、当日を迎えたのだが、満月に照らされ広がっていく砂浜とみかん色の花の海の不思議さに包まれながら、周一がおばあさんと大勢の娘さんたちの写真を撮ると、なんとそこにあったのは、海を染めていたのと同じ、はまゆりの花だけであった。
そばかすのあった母の表情に似たはまゆり、妻の死後それを愛して写真を撮っていた父、そして埋め立てられることの決まった想い出の砂浜…と、それぞれに一目ふたたび触れることのできた周一は、はまゆりと同じ朝焼けの空の色が変わるまで、しばらくそこに立ち尽くしていた。

55ページでまとめられた、短い物語です。
大人っぽい内容のため、一人読み、頑張って読み聞かせ、どちらにしても4年生以上を対象としたいですね。
ハマユリ(別名:スカシユリ)自体も、現在絶滅危惧種に位置付けられているようですが、埋め立てられていく土地や、亡くなっていく人の想い出などが同時に描かれていますので、ブックトークなどして、さまざまに考えを派生・関連させてみたいところです。



茂市久美子・文
こみねゆら・絵

薦めたい学年:4年生~5年生初
         読み聞かせ Level 4
読み聞かせにかかった時間:15分以上


   

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