読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



皇帝にもらった花のたね

むかしむかし、花を愛する国の花を愛する老皇帝は、自分の手渡した種を大切に育て1年後見せに来た者の中から後継者を選ぶことをふと思い立ち、こどもたち一人ひとりに花の種を配ったのだが、その中には、どんな草木も見事な花や実をつけるほど立派に育て上げられる少年ピンがいた。
ところが、自信満々で臨み、懇切丁寧に向き合っても、どんなに工夫を凝らしながら気長に待ってみても、芽一つ出ないまま、とうとう約束の時を迎えてしまい、他の子たちが立派な花々を持ち寄る中、ピンは泣く泣く、種と土だけの植木鉢を持って宮殿に向かう。
どの子の花を見ても眉をひそめてしまっていた皇帝は、ピンの言葉のあとで笑みを広げ、彼を後継者に決めたのだが、それはあらかじめ炒って芽の出ないようにしてあった種を、ピンだけが1年ものあいだ正直に育て、勇気をもって見せにきた者であったからなのだった。

1つぶのおこめ』と同じ、デミ作の絵本ですね。イラストが本当に緻密で、作品への愛情を感じます。
今回は、皇帝が利口者でした。試されて1年後宮殿に戻ったこどもたちのうち、ピンを除くすべてが花を咲かせた、つまりウソの結果を持ち寄ったとする内容が絵本としてふさわしくない、あるいは、皇帝がこどもをそのような方法で試すこと自体正しくないとする意見もあるようですが、まったく問題ないでしょう。
このお話を聞くこどもたちは、自分たちがときどき嘘をついてしまうことを知っています。周囲によって嘘をつかされることがあるのも知っています。
だからこそ、結果の出なかった植木鉢を胸を張って宮殿にもっていくよう勧めたピンの父親や、皇帝の試みを、大人よりもずっとストレートに受け止め、理解することができるのです。
偽りによって損をすることがある。結果が悪くても経緯を大事にし勇気をもって正直に話す。……といったことを理解してもらえる良書だと、私は思います。


デミ・作
武本佳奈絵・訳
(原題:The Empty Pot)

薦めたい学年:読み聞かせ Level 1
読み聞かせにかかった時間:10分以内


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