読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



ひろったらっぱ

身寄りもなく貧しかった若者は、偉くなりたいと思い、西の方で起こっている戦争で手がらを立てようと考えた。
西に向かって乞食をしながら歩いた彼は、あるとき目覚めて手元にラッパを見つけたことから、戦場でラッパ手になることを決意するのだが、さらに歩みを進めるうち、戦争が人々を苦しめているのだと知ると、戦場へ行くよりも苦しむ者たちをラッパで元気づけて畑を元に戻すべく、皆を先導するようになった。
すると、人々も馬や牛と一緒に畑へ出てせっせと働くようになったので、まいた種からはやがて芽が出て、野原一面に麦の生るときが訪れたのだった。

新見南吉・文
鈴木靖将・絵

薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:7分

新美南吉は「ごんぎつね」「手袋を買いに」が日本の教科書会社全てで40年以上採用され続けているただ一人の作家です。
日本人なら新美南吉の名前を知らない人はいないと言えるほどの童話作家だということですね。
ラッパって、士気を発揚する行軍のための楽器にもなれば、もっと広く応援のため・楽しむためにも用いられるものですね。使い方次第。ここにも新見南吉のアイディアが光ります。


みけねえちゃんにいうてみな

なぜだか最近自身を「うーちゃん」と呼ぶようになった小学2年生の息子ともくんを理解できないお母さんと、母を敬遠しているようなともくん、そんな二人の間を取り持つべく、この家のネコ・みけねえちゃんは、まず“「うーちゃん」の秘密”を探ろうとする。
頑ななともくんの態度を少しずつ諭して和らげ、その理由が宿題のため尋ねた“名前の由来”を教えてもらえなかったことへの抵抗なのだと知ると、次にみけねえちゃんはお母さんの説き落としに移ったのだが、一方のお母さんにも、一人抱え込んでいた(ともくんの)お父さんとの別れの記憶があった。
双方の胸の内を知ることができたみけねえちゃんは、彼女の見聞きした事情だけを伝えてともくんを見守ることにしたが、ともくんがたくましくもお母さんを守る宣言までして仲直りしたので、とても安心したのだった。

村上しいこ・作
くまくら珠美・絵

薦めたい学年:2年生後半~3年生
物語・63ページ

タイトルと同じセリフ「みけねえちゃんにいうてみな」が「みけねえちゃんがいうたげる」に変わるときの、なんとも頼もしいこと!その頼もしさがラストのともくんの姿にも重なります。
チャット文化の若者間にも見られる1対1の関係性への執着が、物事を難しくすること、よくありますね。
そんなときに、みけねえちゃんのように橋渡ししてくれる人がいたら問題が問題でなくなることもある。それが忘れられたり、煙たがられたりしているこの頃に、本作は大事な示唆を与えてくれている気がします。


ちび象ランディと星になった少年

象のランディと初めて出会った時から、こころ通じる気がしていた「ぼく」は、仲良しの小象と一層深くわかり合うため、ずっと寄り添うため、象使いになる勉強を始める。
しばらくのあいだ離れ離れで暮らすことにはなっても、互いを想い、こころで話し、気持ちを伝え合いながら再会の日を迎えてからは、幸せな暮らしが始まったように思われたのだが、交通事故により、ランディと「ぼく」の生活は、唐突に終止符を打たれることになった。
生涯ランディに寄り添う約束をしていた「ぼく」は、空からその愛する象に届くよう声を掛けつづける、 「ランディ、パイ!パイ!」と。
※「パイ!」……タイの言葉で「(前へ)進め」

坂本小百合・原案
ごとうやすゆき・文
ミヤハラヨウコ・絵

薦めたい学年:読み聞かせ Level 2
読み聞かせにかかった時間:5分強

柳楽優弥さん主演の映画「星になった少年」としてご存知の方も多いのではないでしょうか。この絵本版は、ずいぶんシンプルな仕上がりになっています。
“日本初の少年象使い”として夢にむかって歩みを始めながら、はかなくも逝ってしまったその短い生涯を、お母様自ら綴られた作品です。
絵本の原案となった、同タイトルの単行本は、フリガナがついて小学生でも親しめるようになっています。



 
 

ねこの看護師ラディ

道端で弱っていたところをアニマルシェルター(動物保護施設)に引き取られた黒ねこラディは、死を待つばかりに思われたが、一生懸命に生きようとする気持ちがあったのか、3ヵ月後に奇跡の回復を見せた。
元気を取り戻すと、彼は施設に運び込まれてくる病気や事故に見舞われた動物たちに寄り添い、痛みに震える動物にも、人に怯える動物にも、死を受け入れようとするものにも、等しく安らぎを与えていった。
自らが苦しんだ分まで傷ついたものの気持ちがわかるかのように、ラディは今日も、穏やかな空気で患者たちを包み続けるのだった。

渕上サトリーノ・文
上杉忠弘・絵

薦めたい学年:読み聞かせ Level 2
読み聞かせにかかった時間:5分

ラディは実在する黒ねこさん。
どんなに大きな動物が運ばれてきても、怖がることなく近づき、動物たちが苦しみから解放されるまで、いたわるように寄り添ったのだそうです。
彼が動物たちを看護しただけでなく、メディアに取り上げられ、いたたまれない動物たちの集まる施設のことを人々に伝える役割も果たした点でも、施設の人々は彼に対し驚きと感謝をもっている、と「あとがき」で語られています。


それしかないわけないでしょう

学校から帰ってきたお兄ちゃんに聞いた未来の話に絶望した妹が、おばあちゃんに相談すると「決まった未来などない」と教えてもらえて安心した。
そして、その話がお父さんの天気予報がはずれることにも通じていて面白く思えたので、妹は様々な未来を空想して楽しんだり、身のまわりの大人が見せてくる“決められた未来”や“決められた選択肢”をつまらなく思って、自分らしい考え方を模索したりするようになっていった。
限定された考え方からすっかり自由になった妹は、調理前のたまごにまで自由を当てはめようとしてお母さんを困らせたが、そこはこども、食べたいのはやっぱりいつものゆでたまごなのだった。

ヨシタケシンスケ・作

薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:10分

今作も楽しめました。毎回きちんとオチまでついていて、大好きです。
今回のテーマに関して言えば『りんごかもしれない』に一部通じるものがありました。
『りんご〜』が、目の前のコレについて、見えない“裏側”を考えさせる内容であるのに対し、今回の『それしか ないわけ ないでしょう』は、まだ見ぬ“先”について、私たちがいつの間にか狭めてしまっている“選択の道筋”を再開放してくれるような作品です。
物語絵本とは違い、読み聞かせても言語的な美しさは与えられませんが、考えるための大きなヒントをこどもたちに投げかけられます。たくさん考えごとをする子に育つ、哲学の第一歩としてオススメのシリーズです。