ずっと昔、人間にこどもたちを殺され、助けることができなかったことを後悔しながら、人を憎み、ついにある集落を襲ってしまった哀しいトラがいた。
夜ごと続く襲撃と泣き叫ぶ民衆の声を静めるため、国王は占いにもとづき、兵ではなく自らの子をトラのもとへ送り出すことを渋々決断したのだが、王子ウェンの真っ直ぐな姿勢と表情は、トラに母であった頃のやさしい記憶を呼び戻させ、その傷を癒していったのだった。
それから数年後、森でトラの子のようにたくましく育った王子は、彼の身を案じた王による出兵を機に城へと戻ることになって以降も、王妃とトラとをそれぞれ母として、立派に大人への歩みを進めていったのである。
チェン=ジャンホン・作
平岡敦・訳
薦めたい学年:読み聞かせ Level 2
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