人生最大の望みを叶えるために単身ペルーへと渡った母に残され、しばらく父親との生活を余儀なくされた小学5年生のキリコは、洗濯物を取り込む際に耳の奥へと入ってきたアブから、入った先が心耳袋(しんじぶくろ)と呼ばれる「人の心をきくところ」であること、さらにはキリコ自身が心をひらくことでアブが出ていけるようになることなどを伝えられ、辟易する。
自分に正直、一途で粘り強く仕事に取り組む母の背中を見ながら、構ってもらえないことをずっと以前からあきらめ、また自分にそう言い聞かせるようにして過ごしてきたキリコにとって、はじめは理解できなかった「自分の心をひらくこと」だったが、友人との関係を考え、友だちの抱える親子関係の悩みを眺めることで、だんだんと自らが抑えてきた心模様を知ることになる。
向き合う相手にわかってもらいたいことを言葉にすることの大切さを学び、それまで溜め込んできた心境を吐露したことによって、キリコは心から楽しめる毎日と、アブとの名残惜しい別れとを手に入れたのだった。
大人もこどもも進化の途上。こどもたちにとって、それを理解するのはそれほど難しいことではないでしょう。
一方で、悩みを抱えながら隠そうとすることも多いこどもたちを前にして、私たち大人がまず等身大でいられるか、「進化の途上」と素直に認められるか。なかなか難しいからこそ、それで解決できる問題・親子関係が意外と多いのではないかなどと思案してしまいました。
140ページほどの短い物語ですが、自身の想いや経験を原稿用紙にぶつけてみたい子は、これからの季節、読書感想文用の図書として選んでみても良いでしょう。ぜひ、型にはまらない自由な感想文を書いてみてください。
ただのゆみこ・文
菅野由貴子・絵
薦めたい学年:5年生~6年生半ば
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