国土の七割を森林が占めると教わり、森の国・木の国と自称したくなるような私たちの日本。
その世界に冠たる森林国で、昔からどのように使われて、木が我々の生活に寄与してきたか、どのような贈りものをくれたかということ、しかし、森を育てたのは他でもない先代の人々であったこと、我々の祖先がどれほど木を森を山を敬ってきたかということ、そして、人が関わらないところでの森林それ自体の働きについて、さまざまな具体例を挙げながら、小学生にも分かりやすい文章、読み飽きない区切り方と分量で紹介している。
私たちが教科書で見て知ったつもりになってしまっているばかりか、大変な思い違いさえしている森林の、“生きもの”としての驚くほど広範な活動を生き生きと見せてくれる、私たちの古くて新しい根になるような128ページである。
環境問題が深刻さを増すなかで、森林への関心も一層高まってきたように見えている一方、私たちの社会が、まだ本当には森林について、そして、それを守るために何が必要なのかということについて理解していないようだと、筆者は警鐘を鳴らします。
森や林の状態が、どれだけ多くの環境問題に関わり、私たちの生活に影響するのか示すことで、この森林の問題を「緑や水など国土環境の問題であり、日本文化が生き残れるかどうかの問題でもある」と訴えています。
本シリーズ「自然と人間」は『川は生きている』『道は生きている』もあわせ、これまで多くの小中学校・国語教科書に掲載されたり、東京大学の論文試験でも課題として扱われたりしてきたようですが、こどもと大人の別なく、“手抜き列島”になりつつある日本に暮らす我々は、もっと身を乗り出してこの問題に関心を寄せなければいけないのですね。
富山和子・文
大庭賢哉・絵
薦めたい学年:4年生後半~中学生
今回の『森は生きている』を読むにあたり、視覚的にも非常に有用な資料になるのが、このシリーズ「木と日本人」です。
絵本サイズで写真が豊富、説明も詳しいです。
適材適所がよく分かり、興味がふくらみます。
シリーズ「自然と人間」は、今回の『森は生きている』と合わせ、全5冊です。
『海は生きている』以外の作品は、文庫版も出されています。
4年生の2学期以降、物語の読書の合間に、少しずつ読み進めてみましょう。
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