大好きな商店街の中でも、その日、特に用事のない眼鏡屋さんに竜二が立ち寄ったのは、「英語メガネおためし無料キャンペーン」ののぼりが出ていたため。
気のいい店主に勧められるまま英語メガネをかけ、商店街を歩いた彼が目にしたのは、普段見なれている光景の変わった姿……シマウマになった横断歩道、大きなたまごのようなナス、背の高いツルのようなクレーン車などだった。
同じ世界でも、“言葉”や“常識”を掛け替えて眺めることで、異なる見え方があること、そして、その異なる見え方を得た自分自身にも違った側面が生まれるということに、竜二は何となく気が付いたようだった。
“英語メガネ”で見る世界を当たり前として育った筆者のアーサーさんは、二十歳を過ぎて“日本語メガネ”を得て、つまり日本語を学習したおかげで、自身の世界観が豊かになったと後書きに記されています。
本書では単語に限定して、その表現の違いを視覚的に楽しませてくれていますが、言葉から文章、そしてものの言い方・伝え方へと、他言語を学び、その世界へ分け入っていくほど、自分が世界を眺めるときの視野が広がります。多言語となれば、さらに。
それは、ことばが文化を表すものだからです。ことばに限らず、異質なものを遠ざけるのでなく受け入れて、太い芯ある世界観を育てていきたいものですね。固さのとれた柔軟な考えは、そういった人たちに備わるものでしょう。
アーサー=ビナード・文
古川タク・絵
薦めたい学年:読み聞かせ Level 4
読み聞かせにかかった時間:10分
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