アフリカ奥地の小さな村で、“戦士”になる特別な祭りの日を迎えた少年ヤクーバは、勇気とたくましさを兼ね備えていることを示すため、他の少年たち同様、一人でライオンを仕留めべく出かけていった。
夜になり、闇の中でしばらく恐怖と闘っていた彼の目の前に突如ライオンが姿を現すと、ヤクーバは槍をにぎり立ち向かおうとしたのだが、すでに傷つき死を待っていただけのライオンの目がヤクーバに真の“勇気”について問いかけるのを感じ取ると、彼は夜明けまでライオンと向き合い、そのまま村へ戻ったのだった。
冷たく静まり返った村は、戦士としてではなく牛の世話役として生きることを彼に命じたのだが、不思議なことに、それ以降ライオンたちがヤクーバの村の牛を襲うことは二度となかったのである。
訳者・柳田邦男によるあとがきにも例が挙げられていますが、“勇気”にも涙と同じようにいろいろありますね。『ないた』の読後と同じように“勇気”をテーマとして作文することも可能です。
バルカン半島やチェチェン、アフリカではルワンダをはじめとした各地で紛争が続いていた1994年に出版された作品だと知ると、「やるかやられるか」あるいは「やられたらやり返す」といった暴力的価値観に一つ線を引くような本作の趣旨が、また感慨深いものになるように思われます。
白い背景に黒で太く描かれた、本当の力強さを感じる作品です。『ヤクーバとライオンⅡ信頼』とあわせてどうぞ。
ティエリー=デデュー・作
柳田邦男・訳
(原題:Yakouba)
薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:5分強
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