読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



ヤクーバとライオンⅠ勇気

アフリカ奥地の小さな村で、“戦士”になる特別な祭りの日を迎えた少年ヤクーバは、勇気とたくましさを兼ね備えていることを示すため、他の少年たち同様、一人でライオンを仕留めべく出かけていった。
夜になり、闇の中でしばらく恐怖と闘っていた彼の目の前に突如ライオンが姿を現すと、ヤクーバは槍をにぎり立ち向かおうとしたのだが、すでに傷つき死を待っていただけのライオンの目がヤクーバに真の“勇気”について問いかけるのを感じ取ると、彼は夜明けまでライオンと向き合い、そのまま村へ戻ったのだった。
冷たく静まり返った村は、戦士としてではなく牛の世話役として生きることを彼に命じたのだが、不思議なことに、それ以降ライオンたちがヤクーバの村の牛を襲うことは二度となかったのである。

訳者・柳田邦男によるあとがきにも例が挙げられていますが、“勇気”にも涙と同じようにいろいろありますね。『ないた』の読後と同じように“勇気”をテーマとして作文することも可能です。
バルカン半島やチェチェン、アフリカではルワンダをはじめとした各地で紛争が続いていた1994年に出版された作品だと知ると、「やるかやられるか」あるいは「やられたらやり返す」といった暴力的価値観に一つ線を引くような本作の趣旨が、また感慨深いものになるように思われます。
白い背景に黒で太く描かれた、本当の力強さを感じる作品です。『ヤクーバとライオンⅡ信頼』とあわせてどうぞ。

ティエリー=デデュー・作
柳田邦男・訳
(原題:Yakouba)

薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:5分強


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