互いに好きで想い合っているのに、お互いそんな素振りをほとんど見せようとしない、テキサスのある田舎町に住むおじいさんと一匹の猫。
冬のある日、魚釣りへ出かけるため朝早く家を出ようとしたおじいさんだったが、いつもはそれについて来る猫が電気毛布の上を離れようとしないので、なんとなく肩を落として一人出かけたところ、後になって置いて行かれたのだと気づいた猫が家を飛び出し、しばらく帰ってこなかったため、からっぽの家へ戻ってくるたび、おじいさんはさびしい気持ちを味わいながら、一方で「どうせなんの役にも立たない猫なんだ」と、それまで何度も繰り返してきた言葉を唱えて割り切ろうとしていた。
それでも、数日経って、猫が怒りに燃えた目つきで魚を携え帰ってくると、おじいさんは猫の言葉が分からないなりに彼女を理解しようとし、自分からも素直な気持ちを示しながら、二度と置いてけぼりにしないことを約束したので、ふたりはまた、すっかり仲良しになれたのだった。
“訳者あとがき”にありますが、訳者の村上春樹氏は、この絵本をアメリカでの散歩中に偶然発見し、表紙の絵に一目ぼれ。立ち読み、気に入り買って帰ると、すぐに翻訳にとりかかったようです。
彼は猫好きであると自身について述べていましたが、ぱらぱらとページをめくってみて、おそらくこの猫とおじいさんとの間にある空気感、愛を愛と表現せず、互いの気難しさと愛情が同居しているようなこの作品の世界に、魅力を感じたのだと思います。
そのような雰囲気を共有できるこどもたちから大人にまで、ひろくお薦めできる絵本です。
テリー=ファリッシュ・文
バリー=ルート・絵
村上春樹・訳
(原題:The Cat Who Liked Potate Soup)
薦めたい学年:読み聞かせ Level 4
読み聞かせにかかった時間:10分ほど
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