読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



モーツァルトはおことわり

幸運が重なり、上司に代わって世界的なバイオリニスト、パオロ=レヴィ氏へのインタビューを任されることになった新米記者のレスリーは、気難しいことで知られ、観察するような眼光の彼を前にしてあがってしまうと、上司から禁止されていた二つの質問、彼のプライベートと、彼が一切演奏しない”モーツァルトの件”とについて口走り尋ねてしまうのだが、少しの沈黙を破ってレヴィ氏が語り出したのは、それまで秘密とされてきた彼の身の上話であった。
パオロ=レヴィは9歳のころ、床屋を営む両親が隠すように持っていたバイオリンの存在に心惹かれると、街で偶然知り合った老人バイオリニストに教えを乞い、見る見る上達していくのだが、実はその老人こそ、彼の両親と生き別れた友人、そして戦下を生き延びるためナチス将校たちの前で幾度もの演奏を共にしたユダヤ人オーケストラの仲間だったのであり、そこにレヴィ氏の両親がバイオリンを封印していた理由も、彼自身が“モーツァルトおことわり”と掲げるようになったわけも隠されていた。
「秘密は嘘と同じ」  ……その気持ちから、自身50歳の誕生日を迎える前にすべてを語った彼は、天にいる両親と恩師も喜ぶようなモーツァルトを次のコンサートで演奏するつもりであることを、清々しそうな様子で付け加えたのだった。

音楽やリズムは、私たちと切っても切り離せないものの一つでしょう。
その生き生きとした面と、暗い影を落とすこともあるという事実と、そのどちらをもこの作品は見せてくれました。

マイケル=モーパーゴ・文
マイケル=フォアマン・絵
さくまゆみこ・訳
(原題:The Mozart Question)

薦めたい学年:小学5年生後半~6年生


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