昨日ご紹介した『トーマスのもくば』は、じつに曖昧な終わり方をするため、好き嫌いの別れそうな作品です。トーマスが木馬を誰にも譲らなかったことについて、悪いと断罪されることも反省することもなく物語が進み、終わっていく点が最大の特徴かと思います。
少し気の強いところのある子なら誰もがしがちな“独り占め”という行為さえも、何かに夢中になっている結果であるとか、成長の過程として、大らかに捉えているのかもしれません。
一方で、お母さんに勧められるまま洗顔し、トーマスが元の顔に戻ったところで終わりを迎えますが、読み終えて「洗う」という言葉のもつ意味、つまり「洗い流す」「きれいにする」「汚れ(穢れ)を落とす」というところまで話してあげられると、「もしかしたら最後にきちんと“反省”を表しているのかもね」と小さな聞き手たちにも納得があるかもしれません。
いま、上に「~かもしれません」で結んだ考え方を二つ提示しました。
これらは【読み終える】ことを読み聞かせとせず、【読み終える→終わりや途中について考える→話し合う】までを意識してきた成果です。「読解力を育てる」は長いこと、「考える力を育てる」はこの10年ほどのうちに、大切にされるようになってきましたが、それらのための手軽な方法が、読み聞かせのそばには眠っています。
一目瞭然のエンディングを迎えるような作品であれば、補足するように。今回のようにそのまま終えてしまっては消化不良が起こりそうな場合には、答えのないところに解釈を見出そうとするように、読み聞かせたばかりの内容について、テーマについて、話し合ったり確認しあえたりするとよいでしょう。上に冊数を重ねていくばかりの読書とは違い、掘り下げていくような深みまで加わった読書体験を得られるはずです。
もちろん、ここに挙げたのも私個人による一つの解釈でしかありません。すべてが可能性で、絶対の解釈はないという点、最大限の注意が必要です。
ブックトークなどと言うと難しそうに聞こえますが、物語性を踏まえたうえで、捉え方は自由です。
どの作品に関しても、「こんなふうに考えることもできるのでは!」というご提案があれば、ぜひコメント欄よりお寄せください。楽しみにしております。
『トーマスのもくば』
小風さち・文
長新太・絵
薦めたい学年:読み聞かせ Level 0
読み聞かせにかかった時間:5分
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