読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



わたしのすてきなたびする目

斜視で生まれてきたジェニー・スーが、それでも自分の片目を“たびする目”と呼んで気に入っていたのは、目が旅してくれるおかげでいろいろな発見があると感じていたからだったが、学校の先生に提案され、あるとき目医者さんへ行くことになった。
病院で“なまけている”というレッテルとアイパッチとを左右それぞれの目に貼られ、目の癖を矯正することになると、ジェニー・スーはぼやけてしまった世界と思い通りにいかない日常に疲れ果ててしまうのだが、お母さんのすてきなアイディアを得て、アイパッチをつけての生活を克服どころか、毎日楽しむようになっていく。
そして、多くのものを見るのに大忙しだった目が、前よりも一つのものをしっかり捉えることができるようになったと自覚できたとき、彼女はそれまでよりも、自分だけの見方で世界を眺めることを大切にしはじめるようになったのだった。

本書は巻末に、小児眼科の代表的な病気としての斜視について、説明を掲載しています。
観察の授業中などにもときどき話題にする〈目〉の不思議ですが、その目の持ち主以外にはどのように見えているのかが分からない、感覚を共有することの実は難しい器官ですね。もちろん、味覚も聴覚も嗅覚や触覚も同様でしょうが、視覚情報に頼ることの多い私たちですから、同じように見えていて当たり前と思い込まず、こどもの〈見方〉に関して少しでも異変を感じたら、すぐに眼科を頼るよう気をつけたいものです。
ただ、作者でもあるジェニー・スーは、物語中で決して斜視を、自分の見てきたことを、否定的に捉えていません。治りつつある目との新しい付き合いが始まろうとしてなお、“芸術家”として自分だけの見方を追いかけようとしているほどです。その肯定感が作品全体を明るくしています。

ジェニー=スー=コステキ=ショー・作
美馬しょうこ・訳
(原題:My Travelin' Eye)

薦めたい学年:読み聞かせ Level 2~3
読み聞かせにかかったい時間:10分


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