読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



差を埋めてくれるもの

昨日ご紹介しました絵本は、タイトル通り、どろぼうが夜空の星を盗むところからはじまりました。

星を自分の手にとってみたい。
小さいころに、多くの方が思われたことでしょう。
お話が長いぶん、もうすこし面白みがあってほしかったと思うのも、私が大人になってしまったからかもしれません。
星を手にする点も、月での待ち伏せや星が空に戻っていく場面も、こどもたちにとっては、きっと大いに楽しいものであると思います。


こどもたちを教え、その成長の過程を考えるとき、かつて同様にこどもであったはずの自身の姿を、生徒たちに投影することがあります。
ただ、それ自体、意外と難しいことですし、それだけでは子育てもうまくいかないものです。

人間は成長していくにつれて、自分の視点が少しずつ高くなってきていることに、なかなか気づきません。
小さい頃と現在では、同じように眺めようとしても、視点が違ってしまっている。
こどもたちの見ているように何かを見ていたり、私がこどもだった頃の良いことを生徒たちに同じように感じてほしいと思っているつもりでも、それは大人として外から観察し概念として捉えたり振り返ったりしている“こども像”でしかないことが、往々にしてあります。
中学生になって間もないような子たちが「最近の小学生ってさ……」と意識の違いを話題にすることが珍しくないように、時間や立場の変化は、私たちに大きな影響を与えるものなのでしょう。

ですが、子育てには今しかありません。
親や教師として彼らを見守る姿勢とともに、自身がまぎれもなくこどもだったころの姿を、修正や歪曲したりすることなく、一生懸命に探ろうと努力することが大事だと思うのです。

そのための簡単で有効な手段の一つが、絵本の読み聞かせでしょう。
読み聞かせをしていると、なつかしく思い出されること、なるほどと感心すること、身につまされるようなことまで、たくさんあります。
そもそも文学というものは、人間を追求し、描くことを目的としているもの。そのため、すぐれた児童文学には、非常に活き活きとした本当のこどもの姿が描かれています。たとえ古い作品でも、こどもの考え方として、いまの子たちに重なる部分がとても多いものです。

こどもたちのために本を読んであげる。
その体験が、自分のためにもプラスになり、こどもたちに話しかける内容にも良い影響を与えている。
私は、そう思っています。



『星どろぼう』
アンドレア=ディノルト・文
アーノルド=ローベル・絵
やぎたよしこ・訳
薦めたい学年:読み聞かせ Level 1
読み聞かせにかかった時間:15分以内

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