読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



ネコのアリストテレス

魔女のベラ・ドンナにもらわれることになったアリストテレスは、"A cat has nine lives." と言われるのもうなずけるほど、他の猫たちと同じく……いやそれ以上に、どんなことでも知りたがり、向こう見ずに行動するネコだった。
ベラ・ドンナの目を盗んで、指示を聞けず、好奇心に任せて、煙突に落ちたり、汽車に轢かれそうになったり、獰猛な犬に追いかけられ車にはねられそうになったりという危機を繰り返し経験するアリストテレスだったが、九つあったはずの命もいよいよあと一つとなってからは、それを大切にし、立派に賢く成長したのだった。
そして、善き魔女に付いて魔女ネコとなり、今も長く幸せに暮らしているのだとか。

作者Dick King Smithが2011年に没する前に、最後に日本語訳された作品です。
あとがきで、訳者が、ネコの九つの命について「ネコは長生きで、そうかんたんには死なないということ。ネコの動きのすばやさ、敏感さ、高いところから落ちてもちゃんと立つところなどを見て、昔の人はそう感じたのでしょう。」と述べていますが、それならばネコの命は一つで十分でしょう、と読んで思わず反論してしまいました。
大型犬などと比べ、本当にちょこまかと落ちつきなく、何にでもクワリと目を見開いてツメをのばし跳びかかる、それが最高にうっとうしく、またどうしようもないほど可愛い点でもある若いネコたち。 レビューにも記したように、いくつ命があっても足りないほど向こう見ずに動き、失敗を繰り返す。 それを見ていて"A cat has nine lives."と言われるようになったのだと私は考えますし、作者が描きたかったのも、そんなネコたちの愛らしさだと思います。
一方で、その命を長らえると、ネコたちは、まるで仙人のような態度に仏様さながらの半眼まで身につけて、落ちつきを得るのですから、本当に不思議です。 今回の“アリストテレス”も、その結果からつけられた名前なのかもしれません。

ディック=キング=スミス・作
ボブ=グラハム・絵
石随じゅん・訳
(原題:Aristotle)

薦めたい学年:3年生


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