戦争が激しくなったある年の春、北の海のチロヌップという小さな島では、二匹のこどもが生まれたキツネの一家が元気に暮らしていたが、一匹だけはぐれた子ギツネは、島へ漁に来ていた老夫婦によって「ちびこ」と名付けられ、一時、大切に育てられる。
ところが、老夫婦が島をあとにしてしばらく経った冬のある日、そこへやってきた兵隊たちによって、きつねの家族は撃たれて殺されたり、ワナにかかったりしてしまい、ワナから抜け出せなかった自分を包むようにして寄り添ってくれた母ギツネとともに、ちびこも雪の中へ埋もれていった。
戦争が終わって、何度目かの春を迎え、老夫婦が再び島を訪れると、キツネザクラの花が島中に溢れていたが、一か所、ひとかたまりで咲いているところに、ちびこの首に巻いたリボンと同じ色の花が一輪咲いているのを見た彼らは、少しの間、そこに立ち尽くしたのだった。
何の容赦もなく、無情に、あっけなく、それまで活き活きと描かれていた命が奪われていく場面があります。
テーマを深読みしすぎてはいけませんが、キツネの両親にも老夫婦にも愛情を注がれて育ったちびこまでが、本当に無力で、簡単に死んでしまう展開に、戦時中の一般市民、特にこどもたちの悲惨を重ねてしまいます。
【なぜ】殺したのでしょうね、考えてみてもいいかもしれません。
たかはしひろゆき・作
薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:15分以内
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