『チロヌップのきつね』は、悲しい物語ですが、これからも多くのこどもたちに愛される作品でしょう。 一方で、物語性に欠陥があるという指摘を含むレビューなども散見されます。
無駄だったり曖昧だったりする箇所が見受けられるのは、事実です。 要約をしようとすると、よく分かります。 たとえば、ちびこたちは兵隊たちに殺されるのですが、島に来た彼らがどのような存在なのかについて描かれていなかったり、物語のはじめに複数回登場する“おじぞうさま”がそれ以後に影響力を持たなかったりというように、物語という観点から「なぜ、それである必要があったのだろう」と首をかしげてしまうところがあるのです。
確かに、より練られた内容なら、作品の評価はさらに高かったでしょう。 また、こどもが喜べば、あるいは感動的なら何でもいいというのも、誤りです。 しかし、それでも、ただただ愛らしいきつねの家族が何が何だか分からないうちに黒い影にのみ込まれていく悲惨、といった漠然としたものを伝えようとしている、それだけで読み聞かせする理由は十分なのかもしれません。
はっきりしないものの中に何を読み取るか。 それは、はっきりしたものや完成されたコース(遊び)などが尊ばれがちな世の中で、大切にしたい子育ての視点かと思います。
『チロヌップのきつね』
たかはしひろゆき・作
薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:15分以内
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