読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



九月姫とウグイス

現在のタイ、シャム王国の末娘として生まれた九月姫は、王から姉たちとそろって授かり大切に世話していたオウムのうち、自分のだけが息を引き取ったことに落胆したが、ふと素晴らしい歌声をもつウグイスと出会うと、自身になつくそれを世話し、自慢に思うようになる。
ところが、姉たちからのお節介な忠告をもとに、ウグイスを自由に飛ばせておくことに不安を感じた九月姫が、それを無理にかごへ押し込めると、ウグイスはみるみる元気を失くして歌も唄わず、ある朝死んだように動かなくなってしまう。
大好きなウグイスのためとはいえ、自らの満足よりもウグイスの自由としあわせを選ぶことは、まだ小さな九月姫にとって簡単なことではなかったが、それを進んで行えた彼女のもとにウグイスはいつでも最高の歌を携えて帰ってきたし、しあわせも舞い込んでくるようになるのだった。

気は優しくても世間を知らず、自由を謳歌するウグイスを幼心に“自分のもの”として閉じ込めてしまった九月姫もまた、御殿で頑固な王様やひねくれた性質の姉たちに囲まれて暮らす“かごの中の鳥”。
「田んぼも、いけも、ヤナギの木も、かごのなかからみたのでは、まるっきり、ちがってみえるんです」というウグイスの嘆きに、はじめこそ耳を貸すことができない姫でしたが、その後、ウグイスの瀕死の訴えによって、心を入れ替えます。
「じゆうでなければ、わたしは、うたえないのです。うたえなければ、死んでしまいます。」 ウグイスのこのたった二言が、どれだけのこどもと、それを読み聞かせる大人たちのこころに響いていくでしょうか。

サマセット=モーム・文
光吉夏弥・訳
武井武雄・絵
(原題:Princess September and the Nightingale)

薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:20分ほど


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