ある日曜日の朝、ひろしは手持ちぶさたを埋め合わせるように穴を掘りはじめ、ただ深くという思いで、黙々と進めた。
ところが、穴の脇から一匹のイモムシが這い出し、顔を見せたのをきっかけに、彼が作業をやめ、肩の力を抜いてその場に座り込むと、穴のなかの静けさや土の香りを、見上げれば、いつもよりも高い空を、感じられたのだった。
穴から出て、もう一度それをのぞきこんだひろしは、自分で掘った深くて暗い“自分の穴”を確認して、また元通り、土をかけはじめた。
何を伝えたいのでしょうね。 これも答えが用意されていないお話です。 いろいろに感じられるでしょう。
ひろしにとっての「穴」のように、何もないところから、何でもいいから、“自分のもの”と思える何かをつくりだす経験があるといいですね。
目標から逆算した過程ばかりに意識を向けるのではなく、ただ黙々と…という取り組みから得る学び。 その大切さを私たちは少しずつ忘れてしまっているかもしれません。
谷川俊太郎・文
和田誠・画
薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:3分半
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