読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



逃げていい。

昨日ご紹介しました『わたしはあかねこ』は、Amazon.co.jpでレビューなどを見ても非常に高評価を得ている作品の一つで、私も初めて読み聞かせしてみたのですが、なるほど、ハッピーエンドといえばハッピーエンドですが、読了後に何か晴れ晴れとしないものを感じられる方もいるような内容だと思いました。
つまり、あかねこは他と違う“自分らしさ”を、一番身近で愛すべき存在である(と信じたいはずの)家族に受け容れてもらえず家出するのですが、自分と同じような境遇のあおねこくんと出会い、惹かれあって共に暮らすようになり、子をもうける  …という内容の、見方によっては軽々しく感じられる部分や、家に帰ることもないまま終わってしまうところが、なんだか寂しく感じる原因かもしれません。
しかし、一方で居場所がないと感じたら逃げ出してみること、狭いところにいないで外の世界へ飛び出し、新しいものを眺めてみることは、それがたとえ「家族」の元からの家出であっても、見守られるべきものだと思うのです。

この絵本を読んで思い出したのは、先月末、夏休みが明けるのを控えた頃に、鎌倉市図書館の職員が発した「学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」という内容の投稿でした。

このようなメッセージを発信するのは、少なからず、勇気のいることだと思います。
『わたしはあかねこ』の制作にあたった方々にもそんな同様の想いがあって、それがこどもたちに素直に伝わっていけばいいなと感じている次第です。
自然の中で生きている動物にとっても、逃げることは、自身の安全を守るために、最も大切で最も有効な知恵ある防衛手段なのだと読解問題の中で読みましたが、もしも息が詰まるほどの苦しみを感じている人たちがいたら、「逃げるのも豊かに生きる手段なんだ」と思い出してもらいたいところです。


サトシン・文
西村敏雄・絵
薦めたい学年:読み聞かせ Level 1
読み聞かせにかかった時間:4分半


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