「新発明のマクラ」
寝ている間に英語が話せるよう勉強できる新発明のマクラを、発明者のエフ氏は勇んで隣人に貸したのだが、1ヵ月も経つと返却されてきた。
隣人の娘さんから聞いた話では、寝言で英語を話していたとか。
眠っている間の勉強が役に立つのは、やはり眠っている間だけなのだった。
「試作品」
研究室に押し入った強盗は、金銭が見当たらなかったため、噂に聞く新発明の試作品を奪って金に換えようと考えるが、博士が頑なな姿勢を崩さなかったため、机とイス以外に何もない地下室に閉じ込めてしまう。
ところが、数日過ぎても十日が経っても博士が元気そうにしていたため、気味悪がった強盗は、とうとう逃げ出したのだった。
実は、試作品とは食べることのできる机とイスであり、自分で味見をすることになった博士の目は、もっと先を見据えていた。
「きまぐれロボット」
料理に掃除、ピアノの調律もしてくれて気も利く上、おもしろい話まで聞かせてくれる大変優秀なロボットを大金で購入し、島の別荘での時間を有意義に過ごそうと出かけたエヌ氏。
だが、ある日からロボットが命令を聞かなくなったり、暴れてエヌ氏を追いかけまわしたりするようになっては、またいつものようにおとなしく働くということを繰り返したため、困惑したエヌ氏が博士のもとを訪れ文句を言うと、それも全て設定なのだと返されてしまう。
何でもしてくれるロボットといつまでも暮らしていたら、運動不足で太りすぎたり、頭がすっかり働かなくなったりと、人間の方が困るようになるので、きまぐれに故障するくらいのロボットが、我々にとってもずっと良いのだと聞かされたエヌ氏の表情は、曇ったままだった。
…と、表題作を含む3編を紹介しましたが、まるで1966年に出版された当時から現在が見えていたような、あるいはもっと未来まで眺めて書いたような、近未来を背景とした寓話集。
4年生~6年生が読んで楽しむのにちょうどいい、オチのある短編物語が30ほど並べられています。
夏休みを目前に控えた今の時期、残念ながら普段読書に親しんでいない子たちが読書課題にとりかかる前に読み切ってしまえる作品だと思います。
星新一・文
和田誠・絵
薦めたい学年:4年生~6年生
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