ある時、林の中へと足を踏み入れた一人の男性に、高い木の上から一匹の年老いたサルが問いかけたのは、人間が過去を忘れ、謙遜を忘れ、知らず知らず怠慢を目指して生きてきた現在の、その先について。
一方、生活の豊かさに支えられているつもりになって、その指摘の一切を認めることのできなかった人間は、怒りに声を荒げると、とうとうその目障りな存在を撃ち殺してしまおうとするのだが、その時すでにサルの姿はなく、落ちてきた数個のトチの実が、男の頭にポカポカとぶつかっただけだった。
啄木の100年以上も前の先見がしたためられた、いまを生きる寓話である。
石川啄木・著
山本玲子・訳文
鷲見春佳・絵
薦めたい学年:読み聞かせ Level 4
読み聞かせにかかった時間:5分半
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