ある時、自らの背負う殻の中に「かなしみ」がいっぱい詰まっていると気がついた1匹のでんでんむしは、己の身の上を案じ、どうしたらよいのか友人たちに聞いてまわることにした。
ところが、どのでんでんむしも口をそろえて、誰もが同じように多くの悲哀を殻に抱えていると話して聞かせてくれたので、彼はそれを、こらえて生きる必要のあるものとして、受け入れなければならないと考えるようになる。
そして、もう嘆くのをやめたのであった。
気がついてしまうと、もう目を背けることのできない深いかなしみ。 今回のでんでんむしのように、そういったものの存在を私たちが認識したのは、一体いつごろだったでしょうか。
巻末には、児童文学に造詣の深い美智子皇后が、子供時代に読み聞かせしてもらった『でんでんむしのかなしみ』が深く心に残っていると語られた旨、記されておりますが、皇后の表情からも、それがよく感じられるような気がします。
何かを眺めるときには、いつどのような感情・ものごとの裏側にも、かなしみが備わっていたり、控えていたりすることを忘れてはならないし、「私」自身を生きていく時にも、自らの抱えるそれを認めた上を歩いていかなければならない。 その向こうに、他者や自分をとりまく環境へのやさしさや愛が生まれるということをこの作品は行間に滲ませている …と、言葉は少し足しましたが、そのようなことも巻末で述べられていました。
新美南吉・文
かみやしん・絵
薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
読み聞かせにかかった時間:3分以内
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