新しく誕生したクモの子どもたちは、一人前になるために、バルーニングと呼ばれる空中飛行(※)を行って生まれ育った環境から遠く離れた場所に自分のすみかを見つける、旅立ちの時を迎える。
兄弟姉妹が憧れをもって新天地を想像し語るなか、ムーサンだけは決めきれぬまま当日を迎え、満足そうに新しい土地へおりていく彼らを見送りながら、空の上でとうとう一人になる。
行く先をきちんと決めることのできる皆を不思議がりながら、風の切れ目で意識も切らしてしまったムーサンは、結局もといたところと変わらないような小さな草むらに降り立ったが、特別なものはなくとも、その地に選ばれたと思うことで良い棲み家にできそうな気が、彼にはしていたのだった。
※夏の終わりから秋のはじめ、または春のはじめ、風の穏やかな快く晴れた日に見られるようです。
いとうひろし・作
薦めたい学年:読み聞かせ Level 1
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