たった100年ほど前のこと、北海道の大地に数多く存在していたエゾオオカミたちは、狩りをし、シカを殺して食べていたが、まるでそれが使命であったかのように、それによってシカは数のバランスを保ち、そのことによってまた、シカに食べられる植物も絶妙に豊かさを保持していた。
ところが、ある年の冬、大雪のためにシカが大幅に数を減らすとオオカミたちはエサを求め、アイヌ民を抑えて開拓をはじめていた内地の人々の牧場へ入り込んだので、反撃と反感をかうところとなり、わずかの間に絶滅の時を迎えてしまう。
捕食者を失ったエゾシカは、その後以前よりも数を増し、今では森や畑を荒す厄介者扱いを受けるようになってしまったが、問題の根本、怒りを向けられるべき真の相手に気がつけたところで、オオカミたちの遠吠えは、もう聞かれないのである。
あべ弘士・作
薦めたい学年:読み聞かせ Level 2
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