芥川龍之介をして「ゲーテは『ライネケぎつね』を書いただけでも偉大だ」と言わしめた本作品が書かれたのは、ゲーテ44歳、1793年のことであった。
折しも革命の狂熱が頂点に達し、ルイ16世やその王妃マリー・アントワネットが処刑されたこの年、多くの政治的・社会的変動の時を迎えたフランスを隣国ドイツ(プロイセン王国)から眺めていたゲーテは、不安な政情下における人間社会の実態を見聞きしながら、「悪の底まで見極めよう」と、この作品を書き上げたものと思われる。
「ライネケは、いつの時代にも、どこの国にもいたのであるし、今もいるのである」とは、とあるドイツ文学者の言葉だが、人間社会の普遍的な裏表の関係、認めがたくも確かなこの真理を、作中の安定なき多彩な弁論と、読む者を唖然とさせるエンディングに込めて、ゲーテは我々に提示してくれている。
(訳者あとがき参照)
ゲーテ・作 上田真而子・訳
小野かおる・絵
薦めたい学年:高校生~大人
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