海と砂漠に囲まれたある小さな町では、人々も静かに質素に暮していたので、事件という事件もなく、X探偵も退屈していたのだが、そこへ唐突に訪ねてきたのは、体の後ろ半分が消えてしまっているピンク色の大きなゾウだった。
そこで、動物園イチの人気者を助けるべくX探偵も奮闘し、その間も少しずつ消えて頭を残すだけになったゾウを前に、最後の手がかりとして病院の院長先生を訪ねると、驚くべき事実が判明したのだった。
さびしすぎる町にあって、人間の飽きやすい心を満たしてきた空想、そんな町の人々の心の病気が、ありもしないゾウの姿をつくりだしていたのだという。それを各人が認めた時、ゾウは人々の中で、偽りの現実ではなく思い出として、生きはじめるのかもしれなかった。
空想だけに生きず現実を直視することで、消えはじめる何か、見えはじめる何か。
文字の大きさ・ページ数などから出版社は「小学1年生から」としたようですが、発達段階に鑑みて、私は下記の通りを推奨学年といたしました。
それでもまだ表現の小難しいところがあるように思いますが、とにかく、自我の形づくられはじめる時期のこどもたちに考える内容のあることを願っています。
別役実・文
阿部隆生・絵
薦めたい学年:2年生半ば~3年生半ば
まさに小学一年生の頃に読みましたが、何度読んでも理解できなかった記憶があります。ただ、30歳を過ぎた今も記憶にある本でもあります。何故、ピンクの象が消えてしまったのか、いつから存在していたのか。本当に深いお話しです。
返信削除