海面の上昇のため沈んでしまった町にあって、家を上へ上へと建て続けることで、ただ一人、頑なにそこを動こうとしないおじいさんがいた。
ある年の冬、ふたたび上がってきた海面に合わせ、また上へと新しい家を建てていたところ、大事な大工道具が下の家へ下の家へと海の中を落ちていってしまったため、おじいさんが水中深く潜ってくと、そこはまだおばあさんと一緒に暮らしていた頃の、最後の想い出の家であった。
さらに深く深く潜ってみたい衝動に駆られたおじいさんは、潜るたび浮かぶあたたかい記憶のふしぎを味わい、新しい季節を迎えた今も、想い出の積み重なったその家の上で、満足そうに暮らすのだった。
平田研也・文
加藤久仁生・絵
薦めたい学年:読み聞かせ Level 3
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