読書も学びも積み上げていくもの



 読書も学びも、積み上げていくものです。
 各書籍の紹介ページに、「薦めたい学年」を記載しましたが、読書は何も焦る必要がないので、下から順に積み上げるように薦めてあげて下さい。 一生かけて良いものをゆっくり読んでいけばいいのです。
 「うちの子は読めるから」は多くの場合、過信です。 教室でこどもたちと接していても、入室当初から問題なく読書できる子は少ないもの。その上、きちんと矯正してあげなければ、いつまでも悪い癖が抜けません。 冊数と時間とを無駄に重ねてしまうというのが、一番怖いことです。
 ここに記した「薦めたい学年」を参考に、皆さまには適切な選書とお子様方への直接の本紹介そして、ときどき内容確認をお願いしたいところです。 まずは「当サイトの眺め方」をご覧ください。



この世でいちばんすばらしい馬

家計を助けるため、少年ながら働きに出ていたハン・ガンは、あるとき高名な画家にその才能を見出されて絵を描く環境を与えられると、めきめきと腕を上げ、宮廷絵師の候補として皇帝に迎えられるまでになったが、少年の頃からとりわけ熱心に描き続けたのは、“いまにも動き出しそうな”生き生きとした馬の絵だった。
そして、噂が噂を呼んだ頃、生きて絵から飛び出す本物よりもすばらしい馬を求めて彼のもとを訪れた武将に応じ、ハン・ガンが一心に筆を走らせると、それは力みなぎり飛ぶように走る世にもすばらしい馬として飛び出し、武将を乗せて戦地へと赴いていったのだが、次々と勝利を重ねながらも、人や馬が傷つき死んでいく光景を目の当たりにし続けこころ痛めた馬は、ついに武将を置き去りにし、戦場を走り去った。
足を血の赤に染めた馬は、ハン・ガンのもとへ戻ると、他の絵に加わって静かに暮らすようになったのだった。

ちょうど2年前に『ウェン王子とトラ』をご紹介していましたね。同じチャン=ジョンホンの作品です。
1200年以上前に実在した中国の画家・韓幹(ハン・ガン)による馬の絵を見て得たインスピレーションを、韓幹がとっていたのと同じ手法で、つまり絹地に描いてイラストとした、すばらしい一冊。
ただ、注意したい点もあります。あらすじにあるように、獅子奮迅の活躍とは裏腹に、馬は哀しみを引きずるようになるのですが、戦地を描写した次の一文(特に【 】で表した部分)が聞き手のこどもたちにとっては生々しすぎるのではないかと思うのです。あえて読み飛ばすことをしてもよいかもしれません。
「【切り落とされた人の首やうで、】傷ついた馬たち、殺された馬たち……」
こどもたちに読み聞かせたくないような、大人でさえ目を伏せずにはいられないような惨状が、今も昔も変わらず戦地と呼ばれる場所では広がっている、それが現実で、そのことからは目を背けるべきではないかもしれません。また、作者の意図を無視するような読み方は、本来私も好むところではありませんが、この【 】部分については、高学年を対象とした場合でも省いてよいのではと思った次第です。

チェン=ジャンホン・作
平岡敦・訳
(原題:Le Cheval Magique de Han Gan 仏語)
(英題:The Magic Horse of Han Gan)

薦めたい学年:読み聞かせ Level 4
読み聞かせにかかった時間:10分強


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