この世に生まれて二十数年、不自由な体のために寝たきりで過ごしているものの、気持ちは自由そのもの、そんなタチバナさんは、その日、知り合いの家を訪ねようと、車輪付きのベッドに乗って、いつものように一人出かけていった。
…といっても、自分だけでは進むことのできない彼は、そばを通り掛かる人々へ陽気に話しかけ、相手の都合の良いところまで押してもらうことで目的地を目指すのだが、あえて色々な人との出会いを求め、愉快も不愉快もありのままを感じながら世間を眺める、他者に支えられながらの旅がそこにはあった。
ただ、支えられてばかりのように思っていた口に頼る散歩に、自分と関わる誰かを支える側面のあることを知ったとき、タチバナさんはベッドから伝わる揺れを、それまでよりもずっと心地よく感じられるようになったのである。
丘修三・文
立花尚之介・絵
薦めたい学年:4年生~5年生初
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