むかし、裕福ながら子宝に恵まれず悩んでいた夫婦のもとに、木箱に入れられた、手毬ほどの大きさをした五十ものたまごが置かれ、神の贈りものだとして妻がそれを大切に育てようとしたものの、気味悪がった夫によって川に流されてしまうと、同じように子がないうえ貧しい暮らしをしていた川下の若い夫婦によって拾われ育てられた。
すると、驚くことに、たまごから孵ったのは女の子ばかり五十人の小さな小さな赤ちゃんだったので、夫婦は一層生活に苦労しながらも彼女たちを大切に育て上げたのだが、10年が過ぎて娘たちが大きくなったころに父が他界すると、母は限界を感じて、彼女たちの生い立ちを話して聞かせ、本当の母を訪ねてみるよう勧めたのだった。
そこで、五十人の娘たちが川上の屋敷を訪れたところ、やはり独りきりで生活をしていたもう一人の母と出会うことができ、それ以来、川上のお母さんも川下のお母さんも、やさしい娘たちによって精一杯の孝行を受けて幸せに暮らしたのだというが、いつしかその話が村から村へと伝え広まり、女の子が生まれた家ではその娘たちにあやかろうと、沢山の人形を飾ってやさしい子への成長を祈るようになったのだという。
3月3日は、ひな祭り。
その起源について、長崎地方に伝わっていたものを再話のかたちでまとめたのが本作とのこと。
今ではひな人形を飾る家も減ってきているように思いますが、せめて女の子たちのつつがない成長と幸せをお祈りすることにしましょう。
谷真介・文
赤坂三好・絵
薦めたい学年:読み聞かせ Level 1 (ひな祭り)
読み聞かせにかかった時間:10分以内
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