おめでとうのさくらまんじゅう

春になると見事に花をつける学校の桜の木は、そのすぐ傍に店を構え続ける和菓子屋のしょうきちじいさんが、小学生のときに植えたものだった。
若くして亡くなってしまった我が子たいちさんの入学祝いにと、その桜の花びらを使い、しょうきちじいさんがかつて作ったさくらまんじゅうは、悲しみを乗り越えて、入学式を迎えた新入生たちに配られるようになった。
新入生の数に合わせて、作るおまんじゅうの数は年々減っても、しょうきちじいさんは今も春を迎えるたび、たいちさんと晴れの日のこどもたちのために、さくらまんじゅうを作り続けるのだった。

西本 鶏介・文
野須 あき・絵

薦めたい学年:読み聞かせ Level 2 (入学時期)
読み聞かせにかかった時間:5分

新小1や低学年のこどもたちへ、春に読んであげたいと思える絵本なのですが、一つだけ気になる表記があります。
息子を亡くした当時のしょうきちじいさん家族を描いた中に「たいちさんのあとを追って死にたいとさえ思いました」というような表記があるのです。
これを読むとき、「どんなにつらく悲しくても、死んではいけないんだよ。悲しみが繰り返すだけだから。しょうきちじいさんも、その後生きがいを見つけたでしょう。でも、それだけ悲しいできごとだったということなのだろうね」と添えるようにしています、私は。
その点だけ読む側に配慮が必要かなと個人的には思いますが、短いお話に一人の人生が凝縮され、あたたかみに溢れた一冊でした。


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